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◆「静かな大地」池澤夏樹
なぜか北アルプスのテントの中で読了。
ちり紙の限られた中、涙が止まらず、翌日の食器が吹けなくて困った(ネタバレです)

佐々木譲「五稜郭残党伝」と船戸与一「蝦夷地別件」に始まった私の蝦夷モノ好きは十数年にわたる。その中でもこれは強い印象に残る1冊となるに違いない。

淡路島から入植した池澤氏自身の祖先の物語。
北海道の近世史の中で、蝋燭の明かりのような輝きを持つ'遠友夜学校'に学び、和人でありながらアイヌと共に静内に馬産の基礎を築いた宗形三郎と志郎兄弟の生き様がそのストーリーの屋台骨。
志郎の娘、由良という女性が、亡き父親がいつも話してくれた昔語りを思い出して綴っていくという形をとっている。
池澤さんの一族は和人だけれど、口伝の物語であるところが、アイヌ的でいいな。

アイヌと共に、アイヌの為に、宗形牧場を起こし、繁栄させていくのだけれど、当然、そのような事が当時のこの土地で許される訳はない。法的に、ではなくて、羨望、嫉妬、もしくは憎悪の対象として。
村の中の人間関係、なんて生易しいものじゃなくて、警察権力や姿の見えない権力者からのものとして、その圧力が掛かってくる。
三郎の人生の結末はとても悲しい。

これは和人にとっての踏絵としてではなく、北海道を愛するものとして、心にしっかりと焼き付けておきたい物語。
また、自分の頭で考えず、雰囲気に流されてばかりいると、自覚なく同じことを繰り返してしまうのが人間なんじゃないかな、ということも改めて思い直した。なかなか難しいけれどね。。。
(’10.10.10読了)

◆「父でもなく、城山三郎でもなく」井上紀子
城山モノが好きなので、書店で見つけてワクワクしてしまった1冊。
城山三郎のお嬢さんが、お父さん亡き後、彼自身、お母さん、そしてご両親と自分のかかわりを振り返って書き綴ったエッセイ。
以前、城山三郎、および小倉寛太郎さんの本を読んだとき、青春時代に戦争を経験している世代は、その後の職業人生においても腹の括り方が違ったんじゃないか、などと感銘を受けたことがあった。
いい意味において薫陶を垂れるような、古きよき時代の父親像を想像していたけれど、実際にはそっと、さり気なく、指針を示してくれるような、強さを秘めた優しいお父さんだったようだ。
「城山三郎」という世間的に大きな存在になかなか向き合えなかった著者の心の葛藤が前書きに記されている。
エッセイ全体の印象としては、作家・城山三郎、ではなく、やはり井上紀子さんがご両親とどういう時間を過ごして、どう見送ったか、の方が強いかな。。。
同郷ということも手伝って、少し自分に重ね合わせて読んでしまう気持ちも避けられなかった。
(’10.10.18読了)
2010.10.18 / Top↑
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