FC2ブログ
「夜想曲集」カズオ・イシグロ
夜想曲集
日本生まれのイギリス人である著者を知ったのは、ある方との会話から。
英語で書かれているものの翻訳。
私は翻訳モノはあまり得意じゃない。
だからって英語で読破する自信なんてないので、やっぱり翻訳で読んだ。
音楽と男女の機微を題材にした短編がいくつか収められている。
どれも、人間の心の内面をほどほどの距離感から描写してあって、好感がもてた。
ちょっと切ない、ってスパイスも効いている。
イマイチ心情が理解しかねるところもあったけれど、お国柄の違いかな。
なんて、読了したのはかなり前なので、印象だけで書いている私(^^;
この著者は本来は長編が人気らしいので、次は代表作を読んでみようかな。

「撃てない警官」安東能明
撃てない警官

組織の力学によって管理部門から現場に左遷されたエリート警察官(ただしノンキャリ、ここが読者の共感を呼ぶ?)が、一般事件や警察署内の事件に直面し、悪戦苦闘しながらも、自分を陥れた人間を復讐する準備を進める。
一見、警察というと特殊な世界に見えるけれど(もちろんそういう側面も多いと思うけど)組織内のもろもろは民間に置き換えても、似たようなことはありそうな気もするし。ある程度リアルで、でも、知らない世界を覗き見できるような感覚が警察小説の良さなのかなぁ?!(それに、民間の大企業は大都市圏にしかないけれど、警察署や方面本部なら日本国中いたるところにあるしね~、とか、余計なことを片隅で思ってみた。)
居住まいを正さずにさらっと読めるのも魅力・・・てちょっと失礼かもしれないけれど、日常生活の中でそういう位置づけの本はとても有難いです。


「肉食の思想」鯖田豊之(中公新書)
初出は1966だから実に45年も前の本だ!でも内容は充分興味深く読めました。
この本は食の角度から欧州人の気質、歴史、宗教やそれらを含めた文化を読み解いている。
いわば和辻哲郎「風土」の食文化版?!

欧州ではその気候風土から穀物栽培よりも牧畜に適している→自然と肉食となる
この時点で既に、西洋人は狩猟民族だとの認識がちょっとズレていたことに気づく。
要は日本にとっての「米」があちらでは「肉」なのですね。だから主食=肉であって、決してパンではない。
西洋化したとされる日本の食生活も実は構造はなんら変わっていない、と著者は述べている。
な~る。
米は各家庭でも簡単に調理して可食となるけれど、小麦は加工過程が煩雑で、それが西洋の食品加工工業、ひいては都市の発展のきっかけとなるという。
だから、西洋のほうがよっぽど、隣人のことが気になるそうだ。全然、個人主義なんかじゃない。
酪農→身近な家畜を屠畜→人間と動物の断絶意識→キリスト教にみる人間中心主義→根深い階層意識
という図式も頷けるもので面白い。
身分制などというのは近代でみたらよっぽど日本>>西洋なのだと勘違いしていたけれど、日本に流入してきた平等思想は(西欧の)歴史的な強い身分制に対する反動力であって、いわば片側に揺れた振子だけが上滑りして入ってきてしまったようなものだとの解釈。
そして最後に、現在の日本の政治混乱(無政治?)は本来大義名分だったはずの自由と平等が実体化してしまったことが遠因であるという。
すべての解を食生活に求めることは出来ないにせよ、食は気候・土壌・風土の制約の中で発達してきたのだから、そんな切り口で文化を比較しているこの本はとても面白かった
スポンサーサイト



2011.03.09 / Top↑